Apple Musicを使い始めて、気に入ったアルバムを「My Music(マイミュージック)」に登録しようとすると、「iCloudミュージックライブラリ」を設定するか聞かれるかと思います。
「My Music」ライブラリに音楽を追加するには「iCloudミュージックライブラリ」を有効にする必要があります。
「iCloudミュージックライブラリ」は、自分の音楽やApple Musicの音楽をすべてクラウド上で管理します。
そのおかげで、すべての音楽をすべてのデバイスで聴けるようになります。
音楽を楽しむ上で便利この上ない機能のように思えますが、しかし、この「iCloudミュージックライブラリ」がかなりの曲者のようです。
というのも、「iCloudミュージックライブラリ」にマッチされた音楽はもれなくDRM(デジタル著作権管理)が付くようなのです。
はじめに:これまでにわかったこと
- 自分のパソコンにあるオリジナルの曲データはApple Musicによって何も変更されません(勝手に置き換わることはない)。
- 元データを削除したりしなければ今回のDRMの問題はありません。
- iTunes Matchに加入していればDRMの問題はありません。
- iCloudミュージックライブラリに保管した曲を、元データのない他のデバイスにダウンロードしたときにその曲にDRMが付くことがあります。
- もし元データを削除したり失ってしまったパソコンで再ダウンロードすれば、その曲にDRMが付くことがあります。
- DRMの有無の確認や付く条件は別記事をご覧ください。
- iCloudミュージックライブラリ内の音楽と自分がローカルに保存しておいた音楽は異なります。Apple Musicを始めても自分がこれまで購入したり集めたりした音楽コレクション(CDや音楽ファイル)は依然重要です。
- 自分の音楽コレクションは必ずバックアップを保存しておいてください。
記事初出当初は手探りの状態で上記のことがわかるまでに時間がかかりました。
もし納得いかなければ以下を読み進めてご確認ください。あるいは別の情報をご参照ください。
Apple Music(iTunes/ミュージックアプリが開きます)
以下、今回の結論を導き出した経緯です。
参照した情報
- The Real Difference Between iTunes Match and iCloud Music Library: DRM | Kirkville
- Apple Music has an iCloud problem | The Verge
- Okay, here's the deal with Apple Music, iCloud Photo Library, and DRM | iMore
- iCloud Music Library adds DRM without buying you dinner first | Cult of Mac
- PSA: Don’t cancel your iTunes Match subscription if you deleted your matched music | 9to5Mac
面倒なら9to5Macの記事だけ読むだけでも事足りるかと思います。
iCloudミュージックライブラリとは
まず、確認しておくと、
「My Music」ライブラリには次のコンテンツが登録されます。
- Apple Music から追加した曲、アルバム、およびプレイリスト
- iTunes から購入した音楽
- Mac または Windows パソコン上の iTunes にほかの音源から取り込んだ音楽 (作成した CD や自分で作曲した曲など)
どんな時にiCloudミュージックライブラリが必要になるかは、冒頭で書いたようにマイミュージックに追加するときです。
iPhoneの場合、次のような流れで設定を有効にするか決定します。
パソコンの場合、設定の中にあります(下はWindowsの設定画面)。
初めて有効にする際、
「Merge」か「Replace」(統合か置換)を選択します。
デバイスに音楽が入っている場合は、音楽を統合するか置換するかをたずねるメッセージが表示されます。デバイス上にある曲をライブラリに追加するには、「Merge」を選択します。※「Replace」を選択した場合は、デバイス上の曲が Apple Music ライブラリで入れ替えられます。
※「Merge」を選択した場合、デバイス上の曲で Apple Music カタログにあるものはすぐに、お使いのほかのデバイスからでも聴けるようになります。 iPhone、iPad、および iPod touch では、カタログに一致するものがない曲は、ほかのデバイスに表示されますが、Mac または Windows パソコンから iTunes でアップロードしなければ、ほかのデバイスで再生することはできません。
Apple Musicを使う上でほとんど必須ともいえるiCloudミュージックライブラリ。
以下、その問題点を見ていきます。
iTunes MatchとiCloudミュージックライブラリの違い
Appleによれば「Apple MusicとiTunes Matchはそれぞれが独立したものですが、補完的な関係にあります」。
iTunes Matchは、Appleの説明を読むと、
iTunesはあなたのコレクションにある曲の中から、iTunes Storeにあるものを見つけます。マッチした曲はすべてあなたのiCloudに自動的に追加されるため、どのデバイス上でも、いつでも聴くことができるようになります。(…)マッチしなかった残り少しの曲はiTunesがアップロードします(…)。そのうえ、あなたがもともと持っていた曲の音質が低くても、iTunesがマッチさせたすべての曲はiCloudから256Kbps AAC、DRMフリーの音質で再生されます。
Apple - iTunes - iTunes Match
ここで、AppleはiTunes Matchがマッチさせた曲はすべてDRMフリーであると説明しています。
iCloudミュージックライブラリは、基本的にはiTunes Matchと同じことをします。
違いの一つは、
Apple MusicにはiTunes Matchと同じ機能があるわけではなく、iTunes Storeで購入した楽曲以外もApple Musicでストリーミングしたい場合は、Apple Musicとは別にiTunes Matchの料金も支払う必要があるということのようだ(Appleに確認中です)
Apple Music、3カ月後の自動更新をオフにするには? iTunes Matchとの関係は? - ITmedia ニュース
Appleに確認中とのことで、この点にはこれ以上触れないでおいて(追記:その後確認したと更新されていました。また、検証した結果「iTunes Storeで購入した楽曲以外もApple Musicでストリーミング」可能でした。詳しくは別記事をご覧ください)、
もう1つの、大きな違いを確認します。
それがDRMです。
When you match and download files from iCloud Music Library (without having an iTunes Match subscription), however, you get files with DRM; the same kind of files you get when you download files from Apple Music for offline listening.
This means that if you've matched your library with Apple Music and iCloud Music Library, you need to keep backups of your original files. If not, you'll end up with files that you can't play without an Apple Music subscription.
Kirk McElhearn Kirkville
iTunes Matchを登録していない状態で、あなたがiCloudミュージックライブラリからファイルをマッチしダウンロードするとき、あなたはDRMの付いたファイルを手にします。これはオフラインで聴くためにApple Musicからダウンロードしたファイルと同じです。
つまり、いったんApple MusicとiCloudミュージックライブラリで自分の音楽ライブラリをマッチさせたなら、自分のオリジナルファイルをバックアップしておく必要があることを意味します。
もしバックアップしなかったなら、Apple Musicの契約なしには再生できないファイルだけが残ります。
A troubling report today from Kirk McElhearn claims that Apple is applying DRM to every track contained in iCloud Music Library — even your own songs. So if you upload regular old MP3s to iCloud, delete them from your PC or Mac and then redownload, they'll be DRMed files.
The Verge
AppleはiCloudミュージックライブラリに含まれる全てのトラック(自分自身の曲にまで)にDRMを付け加えているとKirk McElhear氏は主張しています。
自分で昔のMP3をPCやMacからiCloudにアップロードし、それを再びダウンロードするなら、それはDRMの追加されたファイルになります。
Pay $9.99/month for Apple Music, and you get all your music on all your devices—but that music will be DRM-restricted if it's matched or from the Apple Music streaming catalog. Or... pay $25/year for iTunes Match too, and you won't have to deal with DRM restrictions.
Apple Musicに980円/月を支払い、全てのデバイスで自分の全ての音楽を得ます(ただし、Apple MusicストリーミングカタログからマッチされたDRM制限付きの音楽です)。あるいは、iTunes Matchに3980円/年も一緒に支払うとDRM制限に対処する必要はありません。
iCloud Music Library, included with an Apple Music subscription, serves the same purpose except when it comes time to download anything you find your files locked up with DRM – yes, the files you put there in the first place from the CD you possess.
Additionally, if you cancel your Apple Music subscription, you lose access to all of your music whether you ripped it and added it yourself or not. If you're planning on ripping music from albums, adding it to iTunes, then throwing the CD out, don’t do it. If you ever lose your data or cancel your subscription, iCloud Music Library gets to keep the songs and you’re without the music you bought.
iCloudミュージックライブラリは、DRMでロックされたファイルをダウンロードするときに見つけること以外(iTunes Matchと)同じ目的を提供します。自分で購入したCDから作成したファイルであってもそうです。
その上、Apple Musicの会員をやめるなら、自分であるいはそれ以外でもリッピングしたり追加したりにかかわらず自分の音楽のすべてのアクセスを失うことになります。
もし、CDアルバムからリッピングしてiTunesに曲を追加し、それからCDを捨てようとしているなら、そうしないでください。もし今後自分のデータを失ったりApple Musicの会員をやめるなら、iCloudミュージックライブラリに曲が保管されたまま自分で購入した音楽のない状態になります。
With iTunes Match, if your own music doesn't have Digital Rights Management restrictions, uploading it to iTunes Match doesn't change that. If you delete your local copy of an album and re-download it, you get back a non-DRM version. But that isn’t the case with Apple Music. Download one of your own tracks from Apple Music, and it arrives as a DRM-locked version.
iTunes Matchで、自分の音楽にDRMがないならiTunes Matchでアップロードしても何も変更されません。もし自分のローカルコピーを削除し再ダウンロードしてもDRMのないバージョンが元に戻ります。
しかし、Apple Musicの場合はそうではありません。Apple Musicから自分のトラックの1つをダウンロードしてみると、それはDRMでロックされたバージョンになります。
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要点を整理
こうして要点を見ていくと、iCloudミュージックライブラリを有効にすると、自分の所有する音楽でマッチあるいはアップロードされた音楽にDRMが追加されてしまうことがわかりました。
ただ、ここまで見てきて、マッチする、アップロードする、という区別があいまいなような気もします。
iTunes Matchの場合、iTunes Storeにあるものがマッチされ、それ以外はアップロードされます。
Apple Musicの場合、Appleの次の説明にヒントがありそうです。
Apple Music のメンバーになれば、お手元のミュージックコレクションをお使いのすべてのデバイスで聴けるようになります。
Apple Music にはじめて登録いただいた際に、ご自分で所有されているミュージックコレクションの中の曲が、Apple Music カタログと比較照合されます。 お手元の曲がカタログ内にあれば、お使いのすべてのデバイスで即座に聴けるようになり、メンバーシップが有効な間はいつでもお楽しみいただけます。カタログにない曲も、iTunes を使って iCloud にアップロードすれば、すべてのデバイスでお聴きになれます。アップロードした曲の Apple Music での取り扱い
- 個人用のミュージックライブラリに最大 25,000 曲まで追加できます。iTunes Store から購入した曲の数は、この上限の計算時に除外されます。
- 200 MB 以下または 2 時間未満の曲だけがアップロードされます。
- ALAC、WAV、または AIFF フォーマットの曲は、ローカルで個別の 256 kbps AAC 一時ファイルにトランスコードされてから、アップロードされます。元のファイルは変更されません。
- MP3 または AAC フォーマットの曲は、一定の品質基準を満たしていない限り、カタログとの照合もアップロードもされません。
- デジタル著作権管理 (DRM) で保護されている曲は、お使いの Mac または Windows パソコンが曲を再生できるよう認証されている場合を除き、カタログとの照合もアップロードもされません。
- iTunes でアップロードした曲は、オフラインで聴けるように保存していない限り、お使いのデバイス上のスペースを占有しません。
Apple Music にはバックアップサービスがありません。 デバイスを交換、紛失、損傷した場合に備えて、音楽やほかの情報のコピーをとっておけるように、必ず iOS デバイス、Mac または Windows パソコンをバックアップしてください。
Appleはこの説明で「照合」となっているのが英語のmatchの日本語訳です。
MP3/AACの曲で一定品質の曲はカタログと「照合(マッチ)」あるいはアップロードされます。
この点でiCloudミュージックライブラリとiTunes Matchは同じことをしているようです。ただし、違いはiCloudミュージックライブラリでマッチされた曲にはDRMが付きます。
ALAC(Apple ロスレス)やWAVは、わざわざ品質を落としてアップロードされます。こいつにもDRMが付くのでしょうか。まあ、たとえそうだとしても元のファイルは変更されないので、Apple Musicをやめても問題はなさそうです。
で、一番の問題は
さて、問題はiTunes StoreでDRMフリーで購入した曲や、CDからAACやMP3にリッピングした曲です。
一定品質を満たせばそうした曲はすべてアップロードされます。
これまで見た記事で警告されているのはまさにこれだと思います。
いったんiCloudミュージックライブラリに追加された音楽はすべてDRMが付くと考えておいた方がよさそうです(その方が被害を最小限に食い止められるでしょう)。
DRMの付く曲の判別方法
どの曲にDRMが付くのか、曲のプロパティのステータス「iCloudの状況」で判別できます。これが「Apple Music」となっていればDRM付きの曲です。詳しくは別記事をご覧ください。
オリジナルは問題なし
それでは、Apple Musicを始める前にローカルに保存していた自分の音楽は、iCloudミュージックライブラリを有効後、自動的に削除されてしまう(あるいはDRM付きに置き換えられてしまう)のでしょうか。
その心配はなさそうです。
If you haven't deleted your own copies of your music, then there's nothing to worry about. If you download onto other devices from Apple Music, those devices will get the DRM versions, but you'll still have your DRM-free originals.
9to5Mac
(今回の問題は)自分の音楽のコピーを削除しなければ、何の心配もありません。あなたがApple Musicから他のデバイスへダウンロードすればそのデバイスはDRMバージョンを得ることになります。しかし、あなたはまだDRMのないオリジナルを持っています。
とにかく、現在ローカルにある音楽ファイルが不要になるわけではない、ということです。
不要どころか、最も重要であるとさえ言えるでしょう。
Appleも自分の音楽のバックアップを取るよう説明してます。
そして、新しいパソコンを購入したら、バックアップを戻すことでApple Musicをやめた後でも自分の音楽をこれまで通り聴くことができます。
もし、そうしなければ、Apple Musicに加入し続けない限り自分がこれまで購入してきたすべての音楽財産を失うことになります。
バックアップする
パソコンに内蔵HDDを増設する、外付けハードディスクを接続することで手軽に自分の音楽ファイルをバックアップできます。
外付けなら据置き型で3TBサイズが1.1万円前後、モバイルタイプで1TBサイズが8千円前後で購入できます。
Amazonなどで評価の高い製品を選ぶことをおすすめします。
まとめ
- Apple Musicによって、クラウド上の自分のコレクションすべてがDRM付きになる可能性がある(iTunes Matchに加入していれば問題なし)
- 自分のローカルデータを保持していれば問題はない
- Apple Musicによって、自分がこれまで購入したり集めたりした音楽コレクション(CDや音楽ファイル)は不要になるわけではない
- Apple Musicに登録するしないに関わらず、自分のコレクションを失えば、すべてを失う
- 自分の音楽コレクションは必ずバックアップを保存しておく
こうしてみると当たり前のことを言っているようですが、
Apple Musicによって、自分のCDや音楽データをすべて捨ててしまえるわけではないということです。
Apple Musicに加入したから、これまで貯めたデータは邪魔なのでディスクスペースを空けるために消しちゃおう!ということだけは絶対にしないでください。
なぜAppleはApple MusicでDRMを付けたのか正確なところは不明ですが音楽業界との関係が指摘されています。
今後内容が誤っていることが判明したり新しい情報が出れば記事を更新します。
更新2015年7月4日:記事冒頭にこれまで調べて判明したことを集約し記事を再構成
更新2015年7月4日:DRMの付く曲の判別について追記。DRMの付かない曲もあることが分かったので本記事内の文章の一部を調整
更新2015年7月3日:「はじめに」を冒頭に追記
更新2015年7月2日:9to5Macの引用を追記